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今年3月、私は日本を訪問し、企業のCEOや政策当局者、投資家の方と面談し、KKRの日本オフィスのメンバーとも意見交換を行いました。日本における企業改革は、世界の投資家の間で最も過小評価されている投資テーマの一つとみています。特にプライベート・エクイティにとっては、オペレーション改善、戦略的な事業再構築、そして近年では、従業員オーナーシップの活用などを通じて、自ら価値向上を実現できる最も有望な市場の一つであると考えています。長期投資家にとっての朗報は、これまで日本を投資機会として捉えてこなかったとしても、まだ遅すぎることはないという点です。実際、日本は近年大きな前進を遂げているものの、私たちのデュポン分析(図表17参照)によれば、資本構成、利益率、資産回転率はいずれも依然として改善余地があり、ROEのさらなる向上が期待できる状況にあります。

マクロの観点から見ると、日本は先進国の中で「政策主導による高い名目GDP成長」が起きる「レジームチェンジ」の震源地であるとの確信を、今回の訪問を通じて一層強めました。興味深いことに、近年のデフレからインフレへの転換により、日本は名目GDPが拡大する局面において、株価上昇と債券価格の下落が同時進行する数少ない市場の一つとなっています。これは図表1に示されています。

図表1: 日本株は国債の利回りと共に上昇 

日本: 株式 vs 債券利回り

Line chart showing Japan’s 10-year government bond yields and Nikkei index performance both trending upward from 2014 to 2026, with a sharp acceleration after 2023.
2026年2月28日時点。出所: Bloomberg

図表2: 名目GDP成長が加速する環境下にある日本 

日本の名目GDP成長率(3年移動平均)

Line chart showing Japan’s nominal GDP growth (three-year rolling average) rising to over 4% by 2026 after a dip around 2020.
2026年2月28日時点。出所: Bloomberg

重要なのは、日本における企業改革の動向について理解を深めたことに加え(多くのポジティブな点がある一方、買収に関する指針の見直し内容については、主観的な判断が入る懸念も浮上)、今回の訪問を通じて、投資家が注目すべきいくつかのマクロ的な示唆が得られた点です。主なポイントは次の通りです。

  • 資金調達の源泉に静かだが重要な変化が進行中:  デフレからインフレへの転換により、従来型の預金ベースの資金調達だけでは、「サナエノミクス」下での設備投資需要に対応しきれなくなっています(図表3)。私たちはこれを重要な変化と捉えており、企業が市場や民間の資金調達手段へと軸足を移す中、ノンバンクレンダーやプライベート・クレジットにとって追い風になると考えています。
  • 高インフレ局面において不動産は過小評価:  インフレが高止まりする中、日本の不動産は過小評価されている可能性があると考えています。CPI連動条項の普及が進み、再調達コストは資産価値を大きく上回る水準で推移しています。多くの企業はいまだ不動産ポートフォリオの最適化を十分に進めておらず、さらにはガバナンス改革によるバランスシートや資本配分見直し圧力が高まる中、不動産の投資機会はさらに拡大する可能性があります。
  • 日本ではAIは脅威ではなく必要不可欠:  米国と異なり、日本ではAIが企業の生産性向上に寄与することへの不安はほとんど見られません。AIはあれば便利なものではなく、不可欠なものとなっています。実際、日本の人口動態上の課題が、設備投資の拡大やサービス需要の加速に伴い、複数の業界で深刻な人手不足を引き起こしています。同時に、円安はサービス需要を押し上げています(例えば、外国人観光客、とりわけカップルや家族連れが増加しており、東京のホテルのロビーで席を確保することはほぼ不可能でした)。このような環境下では、成長を維持するためにAIや自動化の導入が一層不可欠となっています。後述の通り、ロボットや自動化、ソフトウェアによる業務処理の自動化を含む生産性向上は、政策を成功させるには必要不可欠です。
  • 円相場が1ドル=160円前後で推移し、金利が急激に上昇しない前提で、私たちは前向きな見通しを堅持:  地政学と金融政策はいずれも企業改革に対する潜在的な逆風となり得ます。特に、エネルギーや食品価格が長期にわたり高止まりする場合や、金利が急上昇する場合、あるいは通貨が過度に弱含む場合には、その影響が大きくなる可能性があります。また重要な点として、アジア全域の企業がすでに資源不足の影響を受け始めており、私たちの現地での観察は単なる理論上のものではありません。地政学的緊張が高まる中で、私たちの仮説である「レジームチェンジ」が現実化しつつあり、非常に繊細なバランスの上に成り立っている状況です。一方で朗報は、後述の通り、日本政府は、長期金利が3.0%に達するまでには、生産性向上を実現するための時間的余裕があると考えています。しかしながら、政府の「高水準の成長を維持する経済戦略」の実行には、官民が連携して市場の信頼を確保する必要があります。

総じて、私たちは日本における公開市場およびプライベート市場の双方への資本配分について、引き続き前向きな見方を維持しています。マイナスの実質金利、大胆な政策運営、確固たる法の支配、そして継続的な企業改革が相まって、地政学的緊張の高まりやプライベート・クレジットへの懸念、さらにはAIによる代替への広範な不安を上回る、良好な投資環境が整っていると考えています。

図表3: 銀行のバランスシートにおける預金の比率は低下し、ノンバンクによる貸出の必要性が上昇 

日本の銀行セクター: 総資産に対する預金の比率

Line chart showing Japanese banks’ deposits-to-assets ratio peaking near 79% around 2011 before declining to about 73% by 2025.
2025年12月31日時点。出所: 日本銀行、Haver Analytics

図表4: 高インフレ局面においても、不動産は依然として割安 

日本: インフレ・株式・不動産価格 ※2020年=100

Line chart showing Japan’s CPI, urban land prices, and TOPIX since 1980, with equities surging recently while real estate remains below its early 1990s peak.
2025年12月31日時点。出所: 総務省、日本不動産研究所、Haver Analytics、KKRグローバル・マクロ&アセット・アロケーション分析

しかしながら、今回の東京訪問(や直後にパリで企業経営者や顧客と過ごした時間)を通じて、世界経済、特にアジアおよび欧州が直面しているいくつかのネガティブなショックも明らかになりました(その多くは、米国にいるだけでは十分に実感することが困難です。図表26)。イラン情勢における深刻な人的被害に加え、サプライチェーンは再び打撃を受けています(コロナ禍と同様、価格よりも供給そのものの確保が問題となっています)。実際、メディアの注目はホルムズ海峡を通る原油輸送に集まっていますが、私たちが強調したいのは、アジアおよび欧州の企業がヘリウムやプラスチックといった原料不足に直面している、という話を複数の耳にした点です。また、肥料の供給も滞っており、LNG(液化天然ガス)を巡る問題も近い将来発生する可能性があるとみています。例えば、台湾のTSMC(台湾の電力消費の約10%を占める)は半導体生産に必要なLNGの在庫をわずか11日分しか保有していません。さらに、短期的な市場のインフレ期待(ブレークイーブンインフレ率)の観点からも、資本市場の一部は、地政学的要因により「高水準が長期化する」可能性を十分に織り込めていないように思われます(図表7)。

図表5: 2026年も高インフレ環境は変わらず、「レジームチェンジ」の継続を予想 

低成長/高成長 および 低インフレ/高インフレの局面

Quadrant chart mapping periods of growth and inflation shows a shift from low-growth, low-inflation regimes toward higher inflation and moderate growth, with 2025–2027 projected in a higher-inflation environment.
2025年11月30日時点。出所: KKRグローバル・マクロ&アセット・アロケーション分析

図表6: 国家安全保障は、法の支配や経済・貿易と一体化し、デジタル化の複雑性の中に組み込まれている 

経済・法の支配・国家安全保障の境界の曖昧化

Venn diagram showing increasing overlap among trade, rule of law, and national security, highlighting how data, technology, and capital/economics are blurring traditional boundaries.
2025年11月30日時点。出所: KKRグローバル・マクロ&アセット・アロケーション分析

図表7: 原油、LNG、クレジット・スプレッド、S&P500はいずれもやや楽観的すぎるとの見解 

イラン情勢と過去の市場混乱期との比較

Table comparing current market indicators to past dislocations shows inflation expectations elevated, while oil, LNG, credit spreads, and equities suggest relatively modest stress versus prior crises.
2026年3月20日時点。出所: Bloomberg

今回の訪問では、中央銀行に近い有識者とも意見交換を行いました。最近の論調は、世界的な金融緩和の流れが概ね一巡したとの私たちの見方を裏付けるものであり、これは私たちの見通しにおける重要な変化を意味します。特に重要な点は、今回のイラン攻撃が数週間ではなく数カ月に及ぶ場合、インフレ圧力がより長期間高止まりし、結果としてFRBの対応がより引き締め方向に傾くリスクがある点です。また、米国外ではすでに変化の兆しが見られています。具体的には、オーストラリア準備銀行(RBA)の利上げに加え、欧州中央銀行(ECB)およびイングランド銀行(BoE)も、インフレが粘着性を示す場合には利上げを行う準備があることを示唆しており、よりタカ派的なスタンスへのシフトが確認されています(図表8参照)。

図表8: 世界的な金融緩和は一巡 

世界の上位25の中央銀行における利上げの割合

Line chart showing the share of major central banks hiking rates peaking near 84% in 2022 before falling sharply to about 24% by early 2026.
2026年3月20日時点。出所: Bloomberg、KKRグローバル・マクロ&アセット・アロケーション分析

大局的に見ると、私たちは依然として「レジームチェンジ」の環境下にあり、株式と債券の伝統的な関係性も含め、資産配分において従来とは異なる考え方が求められています。さらに私たちは、「2026年グローバル・マクロ見通し(High Grading)」で発表したように、足元のようにボラティリティの高い環境においては、投資家がポートフォリオの「ハイ・グレーディング(質の向上)」を検討することを推奨しています。実際のところ、ポートフォリオの質を引き上げるコストが歴史的に見ても非常に低い水準にあります。一方で、注目すべきいくつかの重要な投資テーマがあると考えています。具体的には、あらゆる領域における安全保障(特にイラン情勢は、企業経営者に対して代替供給能力の確保やサプライチェーン強靭化への需要を高めています)、資本集約型から資本軽量型への移行、生産性向上・労働者の再教育、サービス分野(詳細は後述)が挙げられます。

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本資料は、KKRが2026年3月に公開したThoughts From the Road Japanを日本語に翻訳したものです。翻訳と原文の内容に相違がある場合は、原文が優先されます。

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