KKRのリアルアセット・グローバル責任者であるRaj Agrawalが「2026年のインフラ投資環境」で述べているように、現在私たちは、より持続的な高インフレ、マクロ経済および地政学的な不確実性の高まり、そして急速なテクノロジー変革が進む世界に直面しています。この構造転換の環境下では、株式と債券が同時に下落圧力を受ける可能性があり、従来の上場株式60%・債券40%のポートフォリオは、ボラティリティが高まる局面においてリターン創出やショック吸収機能を十分に果たしにくくなっています。さらに、市場集中の進行と資金調達コストの上昇が、上場市場のリターンに圧力をかける可能性があります。
KKRは、このような環境では、上場市場以外への分散投資に加え、持続性の高いグローバル投資テーマへの投資機会が必要になると考えています。また、ポートフォリオの強靭性と魅力的なリターンの双方を追求可能な戦略が有利になると考えており、特に「HALO(Hard Assets, Low Obsolescenceの略で、陳腐化するリスクが低く、資産に裏付けられた事業への投資を指す)」フレームワークに沿った戦略が有望とみています。HALOは、実物資産に裏付けられたキャッシュフローを持ち、急速に変化する世界で不可欠なサービスを提供しつつ、十分なアップサイド余地を有する事業を指します。
KKRは、プライベート・インフラこそがこのような特性を備えており、投資家から今後さらに注目されるべき資産クラスだと考えています。この資産クラスへの投資を通じて、構造的成長、資本保全性、そしてAIによる変革の時代においても比較的陳腐化リスクの低い資産への投資を実現できると考えています。
数十年規模の投資サイクルを支える基盤としてのインフラ
地政学的・経済的不確実性が高まる中においても、インフラ需要は依然として高い持続性を示しています。KKRは、デジタル化、電化、さらにはエネルギー安全保障やサプライチェーン再編への需要拡大を背景に、世界が長期的な投資サイクルに入っていると考えています。電力、データ、エネルギー、物流、通信に関連する資産は、もはや単なる経済活動の支援基盤ではなく、企業および国家レベルの競争力や強靭性を左右する、戦略的重要性の高い資産となりつつあります。重要な点は、これらの資産の多くが経済活動の基盤を支えていることから、相対的に陳腐化リスクが低いという点です。
インフラ需要拡大を支える要因
クラウド・コンピューティング、データ消費、AIの拡大により、コンピューティング需要は大きな転換点を迎えています。Data Center Dynamicsによれば、世界の契約済みデータセンター容量は、2025年から2035年にかけて200%以上増加すると見込まれています。同時に、国際エネルギー機関(IEA)は、今後10年間で世界の電力需要が少なくとも40%増加する可能性があると推計しています。これに対応するためには、発電、送電、配電、ならびに電力網の強靭化に向けた大規模な追加投資が必要になると考えられます。
こうした需要に対応するためには巨額の投資が必要です。世界のインフラ需要は2040年までに106兆米ドルを超えると予測されています1。一方で、各国政府は債務負担の拡大、高齢化、安全保障関連支出の増加などに直面しており、財政余力には制約があります。そのため、この資金ギャップを埋める上で、プライベート資本が中心的な役割を果たす可能性が高いと考えられます。加えて、継続的な地政学・マクロ経済の変動性は、投資環境そのものを変化させています。
こうした要素を総合すると、持続的な需要拡大に加え、更新投資を必要とする老朽化した資産の存在が、インフラ分野における長期的かつ魅力的な投資機会を支えているとKKRは考えています。
図表1: データおよび電力需要は、経済環境に左右されにくい持続的な成長を示している
年間世界データ生成量(ゼタバイト)
図表2: データおよび電力需要は、経済環境に左右されにくい持続的な成長を示している
世界エネルギー消費量(1,000兆BTU)
構造転換に対応するポートフォリオの再構築: プライベート・インフラの役割
前述の通り、足元の世界的な投資環境は、過去の投資サイクルとは異なる大きな転換点を迎えています。その特徴は、構造的に高止まりするインフレと金利、地政学的緊張の高まり、そして地域・業種間で成長率のばらつきが拡大する不均一な世界経済です。直近の市場動向もこうした変化を裏付けています。継続的な地政学リスクの存在がインフレ・リスクプレミアムを押し上げる一方、クレジット市場は極めて緩和的だった環境から正常化へ向かっています。また、投資家はAIが「付加価値をもたらす分野」と「破壊的影響を及ぼす分野」を見極めながら、急速に業界全体の投資評価を見直しています。
こうした変化は、ポートフォリオ構築の観点から特に重要です。株式と債券の値動きの連動性が高まっており、従来型の分散投資効果は低下しています。その結果、国債が市場混乱時の安定的なショックの吸収材として機能しにくくなっています。言い換えれば、効率的フロンティアは以前より平坦化しており、追加的なリスクテイクによるリターン改善余地は縮小しています。そのため、資産配分やリスクテイクの巧拙が、パフォーマンスに与える影響はこれまで以上に大きくなっています。
足元の環境下では、プライベート市場がもたらす、より分散された収益の源泉をポートフォリオに組み込むことが有効であるとKKRは考えています。特に、実物資産に支えられた安定的なキャッシュフローを有する戦略に注目しています。これらは、実物資産によって価値が裏付けられており、収益が生活・経済活動に不可欠なサービスと密接に結びついているほか、契約に基づく比較的明確な収益予見性を備えている場合が多いと考えられます。
従来型の分散投資効果が弱まり、インフレが高止まりする環境では、投資家は市場混乱時の資本保全と、中長期的な資産成長の両立が可能な資産への関心を高めています。プライベート・インフラは、歴史的にこうした特性を安定的に示してきました(図表3)。電力、交通、物流、通信、水処理など、日常生活や経済活動に不可欠な資産へ投資を行い、契約収入や長期的な投資期間を背景に、景気後退局面や高インフレ環境下でも比較的安定したパフォーマンスを実現してきたと考えられます。
同時に、その魅力は資本保全性だけにとどまりません。電力、エネルギー、物流、デジタル・インフラへの継続的な投資需要や長期的な追い風を背景に、プライベート・インフラは各局面において魅力的なリスク調整後リターンをもたらしてきました。
図表3: 魅力的なリスク調整後リターンを示してきた実績
資産クラス別 年率リターンおよび標準偏差(2005年~2024年)
KKRは、インフラ資産が有する強靭性、不可欠性、そして底堅い需要に加え、財政の供給制約が相まって、長期にわたる魅力的な投資機会を生み出していると考えています。これらの要因を踏まえると、プライベート・インフラは、長期投資家にとって今後20年間において相対的に優れたパフォーマンスが期待される資産クラスの一つになり得ると考えています(図表4)。
図表4: プライベート・インフラは、短期・長期の双方で高いパフォーマンスが期待される資産クラスの一つと予想される
KKRが推計する期待リターン(5年および20年投資期間ベース)
高インフレ・高ボラティリティ・急速に変化する環境下におけるインフラのHALO特性
プライベート・インフラは、成長性と資本保全性の双方の特性を有しています。KKRは、この組み合わせが、急速なテクノロジー変革、持続的な高インフレ、そして市場変動が常態化する足元の環境において、特に重要であると考えています。こうした環境下では、一部の市場参加者が提唱する「HALO」投資への注目が高まっています。これは、陳腐化するリスクが低く、資産に裏付けられた事業への投資を指します。インフラは、まさにこの定義に合致する資産クラスだと考えられます。
インフラのHALO特性を支える重要な要素の一つが、本質的に陳腐化リスクが低い点です。多くの業種が急速なテクノロジー変革による破壊的変化に直面する中でも、インフラ資産は、電力供給やデータ送受信など、テクノロジーの進化にかかわらず必要とされ続ける不可欠なサービスを提供しています。イノベーション自体はアプリケーションの分野で進展する一方、その基盤となる物理的なインフラへの需要は引き続き拡大しています。この構造により、インフラは実物資産に支えられた持続性の高いキャッシュフローを創出しやすく、急速に変化する環境下においても陳腐化リスクを抑制できると考えられます。
さらに、足元では一部の分野(例:住居費)でインフレ率の鈍化が見られるものの、KKRは、物価全体がコロナ前のような安定的かつ低位の水準へ持続的に回帰する可能性は低いと考えています(図表5)。直近のエネルギー価格上昇圧力は、こうした見方を改めて裏付けるものとなっています。歴史的に見ても、インフラは低インフレ局面・高インフレ局面の双方において魅力的な投資成果を実現してきましたが、その背景はそれぞれ異なります(図表6)。
低インフレ局面では、安定的なキャッシュフロー、オーガニック成長、良好な資金調達環境がリターンを支えてきました。一方、高インフレかつ高ボラティリティの局面では、契約に基づく収益体系や物価連動条項、さらにインフラ資産そのものの不可欠性が下支え要因となり、物価要因を除いた実質キャッシュフローの維持や市場においてストレスがかかる局面での下落抑制に寄与してきました。このように、異なる市場環境においても安定したパフォーマンスを発揮してきた点は、インフラがHALO的な特性を有していることを示しているとKKRは考えています(図表7)。
図表5: インフレの構造転換局面では、一般的にボラティリティ上昇を伴いやすい。コアCPIは、2014~2019年平均の1.6%を上回る、約2.5%程度の平均的水準に落ち着くとKKRは予想
米国CPI前年比
図表6:プライベート・インフラは、比較的低いボラティリティと、各インフレ局面においても安定したパフォーマンスを実現
過去のインフレ局面別リターンおよびボラティリティ
図表7: プライベート・インフラは、市場下落局面においても高い強靭性を維持
こうした特性は、投資家がテクノロジーによる混乱に伴う不確実性への対応を迫られる中で、さらに重要性を増しています。AI関連投資の拡大が続く中、KKRは、電力、通信、データ関連資産への資本投下も継続的に拡大するとみています。この文脈において、インフラは同じ構造的成長テーマへの投資機会を提供しつつも、本質的に異なるリスク特性を有しています。例えば、データセンターや電力インフラなどの資産は、バリュエーション拡大やテクノロジー普及サイクルへの依存ではなく、長期契約に基づくキャッシュフローを基盤としたリターンを創出します。
KKRは、インフラは資本保全性を備えながら、変革的な成長テーマを取り込むことが可能だと考えています。インフラの収益の源泉は、実物資産および不可欠なサービスに根差しているため、多くの株式・債券とは異なる値動きを示してきました。その結果、歴史的に株式・債券双方との相関が低〜中程度にとどまっています。そのため、インフラはポートフォリオの強靭性向上に寄与し得る資産であり、単なる分散投資先ではなく、今後はポートフォリオの中核的な構成要素として位置付けられるべきだとKKRは考えています(図表8)。
図表8: 主要資産クラスとの相関: プライベート・インフラは、主要資産クラスに対する分散効果をもたらす
プライベート・インフラにおけるマネージャー選定の重要性
インフラは保全的な特性を有する一方で、運用成果にばらつきがないわけではありません。実際には、資産選定、案件の組成力、業務運営の遂行力、さらには価値向上能力の違いによって、マネージャー(投資会社)の間でリターンに大きな差が生じる可能性があります(図表9)。特に、インフラ投資においても、下位25%のマネージャーを回避することによる効果は、プライベート・エクイティと同程度に重要となり得ます。これは、資産クラスとしての強靭性が、必ずしもポートフォリオレベルでの安定性を意味するのではないことを示しています。そのため、規律あるマネージャー選定と投資案件の精査は、依然として極めて重要です。
図表9: プライベート市場におけるマネージャー選定の重要性
プライベート市場における過去のマネージャー間リターン格差 ― 下位25%マネージャー回避による影響(年率換算)
もっとも、上述したような魅力的な特性を有しているとはいえ、プライベート・インフラ投資がリスクを伴わないわけではありません。KKRでは、リスクベースの投資アプローチを採用しており、電力や労働力などの投入要素が安定的に確保されている資産、契約上の保護条項に支えられた保守的な資本構成、法制度が整備された地域への投資、そして優れた運営能力を有する運営者との協働を重視しています。
結論
足元の環境下において、プライベート・インフラは、ポートフォリオにおける中核的な構成要素としての役割を強めつつあるとKKRは考えています。持続的な高インフレ、財政制約の強まり、そして地政学的分断の進行といった環境下では、投資家は、安定性、物価調整後の実質的な利回り、そして構造的成長への投資機会を提供する資産への関心を高めています。
インフラは、まさにHALO特性を備えた資産クラスだと考えられます。すなわち、資産に裏付けられた持続性の高いキャッシュフローを通じて価格下落リスクを抑制しつつ、高いアップサイドの可能性を追求できる投資です。
インフラは、底堅い需要、インフレ耐性を支える契約または規制に守られたキャッシュフロー、そしてポートフォリオの安定性向上に寄与し得る独自のリターン特性を兼ね備えています。同時に、デジタル化、電化、エネルギー安全保障といった世界経済を変革する長期テーマへの投資機会も提供しますが、それは投機的な投資ではなく、資産に裏付けられた長期性資産を通じて実現されるものです。そのため、KKRは、プライベート・インフラはポートフォリオの中核資産として位置付けられるべきであり、短期・長期の双方において、相対的に優れたパフォーマンスが期待できる資産クラスの一つになると考えています。
参考
1 出所: McKinsey & Company
DISCLOSURES