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個人投資家のポートフォリオにおける プライベート・エクイティの意義

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はじめに

プライベート・エクイティ(以下、「PE」)は、その誕生以来大きく進化してきました。もはや創成期の小規模な投資と見なされることはなく、同資産クラスの運用資産残高は足元で10.5兆米ドルを超えています。用語や規模の変化にとどまらず、オープンエンド型(別称「エバーグリーン型」)ファンドの普及により、PEはより幅広い投資家にとってアクセス可能な存在となっています。

本稿では、①なぜ投資家がポートフォリオにPEを組み入れるのか、②個人投資家はどのようにその配分を実現できるのか、について考察します。マクロ的視点および事例を用いながら、PEはもはや「オルタナティブ投資」ではなく、リスク調整後リターンの最大化を目指す、すべてのポートフォリオにおいて、構造的な役割を担う中核的かつ付加的なリターン(アルファ)創出が期待可能な株式投資であることをご紹介します。

1. なぜPEはリターン最大化を目指すすべてのポートフォリオに不可欠なのか

経営への関与による持続的なアルファ創出

PEの競争優位性は、「価値を獲得する」のではなく、「価値を創造する」能力に根ざしています。アクティブかつ直接的なオーナーシップを通じて、優れたマネージャーは、戦略的変革の推進、業務の最適化、経営陣の強化、新たな成長ドライバーの創出などを行い、自らの成果をコントロールすることが可能です。この点が、一般的にパッシブ性の高い上場株式投資との違いです。

過去の定量データもこれを裏付けています。ケンブリッジ・アソシエイツによれば、過去25年間において、グローバルPEは上場株式市場を平均で5%超アウトパフォームしており、これはPE投資家が企業のオーナー兼オペレーターとして果たすアクティブな役割に起因すると考えられます。

図表1: グローバルPE指数と上場株式の年率ネット・リターン比較

Chart comparing net performance of private equity index and public equities
2025年6月末時点。出所: Cambridge Associates、KKRグローバル・マクロ&アセット・アロケーションによる分析。指数は実際に運用されている商品ではなく、指数そのものに直接投資することはできません。

過去のリターン、ボラティリティ、相関係数を用いてモンテカルロ・シミュレーションを行い、個人投資家向けに最適と考えられるポートフォリオを導出したところ、PEは優れた期待リターンと、オープンエンド型ファンドにおいても依然として存在する「非流動性プレミアム」により、15%の配分が推奨されました¹。この15%の配分に加え、インフラストラクチャー、クレジット、不動産など他のプライベート資産にも15%を配分することで、(支配権を伴う経営、異なるリスク・リターン要因、長期保有などによる)上場市場との低い相関性や市場センチメントではなく企業ファンダメンタルズに基づく評価を背景に、年率1%超の期待リターンの向上とボラティリティ低下が見込まれます。長期的には、この複利効果は非常に大きな影響をもたらすと考えられます。

実現ベースの年次リターンを用いたモンテカルロ・シミュレーションにおいては、PEへの配分が小幅であっても、ポートフォリオの効率的フロンティアが上方にシフトし、リスク1単位当たりの期待リターンが向上することが示されています。

図表2: PEはリスク1単位当たりのリターンが高い

実現ベースの年次リターンおよびボラティリティの比較(伝統的資産とPE、%)

Line graph comparing Realized Annual Returns and Volatility with Traditional Assets and Private Equity on a percentage basis
リターンおよび相関係数は、2005年から2024年までの四半期リターンを用いて算出。ボラティリティは、2005年から2024年までの暦年ベースの年次リターンを用いて算出。伝統的資産は、債券(ブルームバーグ・グローバル・アグリゲート・トータル・リターン・米ドルヘッジ指数)および上場株式(MSCIワールド指数)です。PEは、ケンブリッジ・グローバル・バイアウト指数を用いてモデル化しています。データは2024年12月時点。出所: ブルームバーグ、MSCI、ケンブリッジ。KKRグローバル・マクロ&アセット・アロケーションによる分析。本分析は説明目的のみに提供されるものであり、実際の投資成果を保証するものではありません。

より広範でダイナミックな投資機会

PEが注目される背景には、構造的な変化にもあります。上場市場は縮小・集中が進む一方、プライベート市場は深さ・多様性の両面で拡大しています。2000年以降、米国の上場企業数は約50%減少した一方、売上高1億米ドル超の未上場企業数は大幅に増加し、現在ではその85%が非公開企業です。2012年以降、PEファンドが支援する企業数は上場企業数を上回っています。すなわち、株式投資を上場市場のみで行うポートフォリオは、拡大し続けるプライベート市場の価値創出機会を大きく取り逃がしていることになります。

図表3: 上場株式は、世界の企業全体のごく一部にすぎない

米国の上場企業数と、従業員50名超の未上場企業数の比較

Line chart comparing the number of public companies and private companies
出所: 米国労働統計局、世界銀行、KKR。2024年12月31日時点。

このような構造変化により、投資の焦点は価値創造およびリターン創出へと移行しています。かつてはIPO後に実現していたイノベーションや利益成長の多くが、現在では企業が上場する前の段階で起こるようになっています。企業成長におけるあらゆる局面への投資機会を求める投資家にとって、PEは独自のアクセス手段を提供します。

足元でS&P500指数は、巨額の人工知能(AI)関連の設備投資を行う「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる超大型テクノロジー企業7社により、3分の1超が占められています。こうした規模およびセクターの集中を回避するため、投資家はしばしば上場小型株に注目しますが、「小型株プレミアムは消滅した」との見方も少なくありません。しかし、KKRの米国マクロチームは、これは上場株式市場に限った現象であると考えています。小型株プレミアムは、PEにおいては依然として明確に存在しています。例えば、KKRのPE投資におけるポートフォリオ企業の企業価値(EV)は平均で20億〜50億米ドルであり、これは典型的な上場小型株から中型株に相当する規模です。上場市場では持続的な成長や分散効果を得にくくなっている中で、PEはそのギャップを補う役割を果たし得ると考えています。

図表4: PEはラッセル2000指数と比べて「成長」セクターへのアクセスに優れる

バージス北米バイアウト指数とラッセル2000指数のセクター構成比較

Bar chart comparing sectors between North American buyout and the Russell 2000
注: 上場株式指数は2025年6月30日時点、バージスのデータは2025年6月30日時点(本稿執筆時点において入手可能な最新データ)。セクター別比率は、2020年から2025年に実行された投資の評価額を用いて算出。

コントロールと規律によるリスク管理

PEのリスク特性は、しばしば誤解されています。レバレッジ(借入)は確かに特徴の一つではあるものの、リターンの基盤ではありません。実際には、金融工学ではなく、業務改善こそがパフォーマンスの主要な原動力となっています。

PEにおける最も純粋なアルファの源泉は、企業価値の創造であると考えられます。これは、マネージャーが投資先企業の事業運営や機能に直接変革を加えることで、同等の上場企業群と比べて、より高い成長を実現したり、より高い企業価値を獲得したりする能力を指します。

同様に重要なのが、PEマネージャーが、時間をかけて資本を投下・回収する際の規律です。時価の変動に反応せざるを得ない上場市場の投資家とは異なり、KKRのように強固な投資執行体制を持つPEスポンサーは、さまざまな市場の局面で一貫した投資を行うことが可能です。市場の歪みが生じた局面では積極的に投資し、過熱局面では規律を維持します。KKRでは、どの年が魅力的な投資開始年になるかを、事前に予測することは極めて困難であるとの認識から、世界金融危機以降、一定のペースで投資を実行してきました。各年において最良の投資機会を厳選し、企業価値の向上を通じたリターン創出を追求しています。

この一定の投資ペースは、構造的な優位性として機能します。リターンの変動を平準化し、市場タイミングの失敗によるリスクを軽減するとともに、ボラティリティに左右されるのではなく、ボラティリティを通じて複利成長を実現するポートフォリオ運営を可能にします。長期的な市場環境の変化において、こうした時間軸における規律は、PEの低いボラティリティと、より一貫したパフォーマンス特性を支える、目立たないながらも強力な要因となってきました。

2. 個人投資家におけるPEの組み入れ方法

PEは、依然としてポートフォリオ・パフォーマンスを牽引する強力な存在であり、幅広いセクターへの分散投資を可能にします。より高い長期リターンとポートフォリオの耐性の強化を求める投資家にとって、次に示すように、他のプライベート資産と併せてPEを分散されたポートフォリオに組み入れることは、従来の上場株式60%・債券40%のポートフォリオと比較して、パフォーマンスの向上、投資機会の拡大、市場の不確実性への対処能力の向上につながります²。

図表5: オルタナティブ資産を組み入れたポートフォリオの例

Pie chart showing an example portfolio with implementation of alternative asset exposure
出所: 2023年12月31日時点、KKRグローバル・マクロ&アセット・アロケーション。本図表は説明目的のものです。

マネージャー選定の重要性

PEを含むオルタナティブ資産をポートフォリオに組み入れるにあたっては、マネージャーの質と分散が引き続き最も重要な検討要素となります。特に質の観点では、プライベート市場におけるリターンのばらつきは、上場市場と比べて非常に大きいことが特徴です。PEでは、上位25%と下位25%のマネージャーのパフォーマンス差は14%にも及びます。したがって、さまざまな市場環境を通じて一貫して優れた実績を有するマネージャーを選定することが極めて重要です。

図表6: PE投資戦略の一種、バイアウト戦略においては、伝統的なアクティブ上場株式運用以上にマネージャー選定がリターンに大きな影響を及ぼす

Chart showing how manager selection has a greater impact on returns in the buyout space
出所: イーベストメント・アライアンス、データは2024年12月31日までの15年間。米国上場株式には大型株および小型株指数を含む。プレキン、データは2024年12月時点(2022年までの過去15年間に投資を開始したファンドが対象)で、上位25%、中央値、下位25%の算出にはネットIRRを使用しています。指数は実際に運用されている商品ではなく、指数そのものに直接投資することはできません。将来にわたり同様の傾向が続く保証はありません。

資産クラス内での分散

PEは、アーリーステージのベンチャー・キャピタルから成熟企業を対象とするバイアウト投資まで、リスク・リターン特性の異なる多様な戦略を含む、広範な資産クラスです。

最も初期段階に位置するベンチャー・キャピタルは、「ハイリスク・ハイリターン」として知られ、事業実績が限られる一方で高い成長ポテンシャルを持つ若い企業に投資しますが、しばしば高い損失率を伴います。次に位置するグロース・エクイティは、すでに一定の事業基盤を持ち、さらなる成長や拡大のために資本を必要とする企業を対象とします。そして、その反対側に位置する、成熟した企業の経営権を取得するのがバイアウト戦略です。

図表7: 主なPE戦略と異なるリスク・リターン特性

Illustration showing the relationship between returns and risk in buyouts, growth equity, and venture capital
KKRグローバル・マクロ&アセット・アロケーションによる、説明目的としたものです。

KKRでは、グロース・エクイティおよびバイアウト戦略に注力しています。リスク特性の異なる分散したエクスポージャーを持つことが、PEの投資効果を最大化し、長期的なリターン創出につながると考えています。

グロース・エクイティが投資対象とする企業は、確立された製品、実証済みのビジネスモデル、十分な収益規模を有する企業です。これらの企業は、安定的なフリーキャッシュフローの創出よりも、成長や製品開発への再投資を優先する傾向があり、収益の予見性は相対的に低いため、高水準のレバレッジは適しません。その結果、資本構成は主に株式で構成され、負債は限定的またはゼロとなるケースが一般的です。これにより、成長投資の柔軟性を確保しつつ、業績変動を吸収できる構造となります。この資本構成は、成長や流動性を制約しうる債務を回避することでリスクを適切に管理しつつ、投資家は株式価値の上昇を通じたリターンを享受できます。

バイアウト投資は、確立された市場ポジション、予見性の高い収益、安定したキャッシュフローを有する企業の経営権取得に焦点を当てます。これらの企業は高成長期を過ぎている場合が多く、一定のレバレッジを支え得る事業規模と財務基盤を備えています。もっとも、すべてのバイアウト案件でレバレッジが用いられるわけではなく、実際、レバレッジを用いる場合でも、過去10年間で平均的なレバレッジ水準は約3割低下しています。レバレッジの活用は、企業の事業リスクの低さやキャッシュフローの可視性を反映したものです。この戦略はまた、資本配分の規律を高め、業務改善、コスト最適化、戦略的再構築を通じた収益成長とキャッシュ創出を促します。

投資家にとって、これらの戦略を適切に組み合わせることは、分散効果を高め、プライベート市場全体の投資機会を幅広く取り込み、景気や市場環境の変動を超えて安定したリターンを実現する助けとなります。

ポートフォリオにおけるコア・サテライト構成

従来、個人投資家がクローズドエンド型(別称「ドローダウン型」。契約した資金を段階的に払い込み、途中解約が原則不可)のPEファンドにアクセスすることは、分散と規模を確保するうえで運用面の複雑さが大きな障壁となっていました。オープンエンド型ファンドは、こうした課題を解消し、分散された安定的かつ継続的に複利成長するPE投資を、運用面で容易かつ効率的に実現する手段となっています。一部の投資家は、投資目的を達成するために、オープンエンド型をコアのPE投資としつつ、高い確信を持つセクターや地域についてはクローズドエンド型ファンドを活用することがあります。

このコア・サテライト型アプローチは、機関投資家が用いる投資構造を、個人投資家の規模や流動性ニーズに適合させたものです。その結果、よりバランスが取れ、より強靭で、複利成長を志向したポートフォリオ構築が可能となります。

さらに、償還期限のないオープンエンド型への投資配分は、満期を迎えたクローズドエンド型ファンドからの償還金を再投資するハブとして機能し、投資家自身が再投資を行うことなく、PE全体のエクスポージャーを維持することが可能です。この循環的な複利効果(資本が回収され直ちに再投資されること)は、長期にわたり一貫してプライベート市場投資を維持したい投資家にとって、大きな利点です。

図表8: クローズドエンド型とオープンエンド型の組み合わせは、長期的により高い複利リターンをもたらす可能性

Two charts showing how blending evergreen and drawdown funds could produce higher compounded returns over time
注: リターンの前提条件は、図表2に記載された内容と同一です。上記は例示のみを目的としています。分散投資はリターンや元本の保全を保証するものではありません。上段の表は、オープンエンド型ファンドにおいて資金が完全に投下済であると仮定しています。下段の表は、図表2の注記に記載されたものと同じモデルを使用しています。「クローズドエンド型のみ」のシナリオでは、未拠出の資金は上場株式60%・債券40%ポートフォリオで運用され、分配金は上場株式60%・債券40%ポートフォリオに再投資されることを想定しています。下段の組み合わせシナリオでは、クローズドエンド型ファンドへの未投資のコミットメント資金(あらかじめ拠出することを約束した資金)は上場株式60%・債券40%ポートフォリオで運用されることを想定しています。例えば、クローズドエンド型50%・オープンエンド型50%のシナリオでは、初日の配分は50%が上場株式60%・債券40%ポートフォリオ、50%がオープンエンド型ファンドに投資されています。クローズドエンド型ファンドでキャピタルコール(ファンドからの要請に応じて、あらかじめ契約・合意した資金を払い込むこと)が生じた際には、上場株式60%・債券40%ポートフォリオから充当される前提です。クローズドエンド型ファンドが分配金の支払を開始すると、その分配金はオープンエンド型ファンドに再投資されます。

結論

慎重に設計されたプライベート・エクイティ配分は、広範な地域分散と、バイアウト、グロース・エクイティ、オポチュニスティック(機会型)・テーマ型投資など多様な案件へのアクセスを通じて、ポートフォリオの耐性を高めます。これらは経済環境の変化に対して異なる反応を示し、単一市場・単一戦略のリスクを抑制することで、長期的な資産保全と成長を支えます。

資産運用の次のフェーズを定義するのは、従来の上場株式60%・債券40%の配分モデルではなく、アクセス、柔軟性、そして継続性です。

不確実性が高まっている世界において、企業を所有し、改善し、環境変化を通じて複利成長させる力は、時代を超えた価値創出の源泉であり続けるでしょう。

注釈

1 モンテカルロ・シミュレーションとは、不確実性やリスクを理解するために、数千回に及ぶランダムなシナリオを実行する数学的手法です。ひとつの将来予測を行うのではなく、偶然の要素を含む事象を何千回も試行することで、起こり得る結果の幅と、それぞれの結果が生じる確率を導出します。

2 そのためには、ポートフォリオの目的に沿って上場株式および債券の配分を慎重に引き下げるとともに、各資産クラスのパフォーマンス、ボラティリティ、ならびに資産クラス間の相関を考慮することが重要です。

用語について

クローズドエンド型(別称「ドローダウン型」)ファンド:  投資家が当初に一定額を約束し、投資機会の発生に応じて数年にわたり段階的にキャピタルコールが行われる、従来型のPE投資形態です。一般的に、投資家は5〜7年程度の期間、資金をファンドに拘束されます。
 

オープンエンド型(別称「エバーグリーン型」)ファンド: 投資家資金の大部分が初期段階から投資に充当され、運用開始初日からリターン創出を目指すPE投資形態です。分配金は通常自動的に再投資され、定期的な流動性(解約機会)が設けられています。

アルファ: 投資リターンのうち、リスク水準から期待されるリターンを上回る部分を指します。

 MOIC(Multiple of Invested Capital/投下資本倍率): 投資した元本が何倍に成長したかを示すパフォーマンス指標です

リスクについて

PE投資は、すべての投資家に適したものではなく、高度な金融知識を前提とします。また、以下を含む(ただしこれらに限定されない)さまざまなリスクが存在します。  

流動性の制約 - 投資持分の解約(換金)は制限されており、一定の条件や制約が適用される場合があります。投資持分を売却するための公開された二次市場は存在せず、将来においても形成される可能性は低いと考えられます。また、投資持分は自由に譲渡できません。

集中リスク - PE投資では、単一の運用者や単一の投資戦略を起用する場合があり、その結果、分散効果が限定され、リスクが高まる可能性があります。

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本資料は、KKRが2025年12月に公開したThe Case for Private Equity in Individual Investor Portfoliosを日本語に翻訳したものです。翻訳と原文の内容に相違がある場合は、原文が優先されます。

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